町「財政は健全だ」vs 私「決して健全ではない。将来世代の負担が大きい」・・・なぜ、こんなに意見が分かれるのでしょうか?
財政健全化法 vs 新公会計制度
町の財政について町と私の見解が違うのは、町は財政健全化法の指標を、私は新公会計制度の指標を使っているからです。
新公会計制度では、これまでに無かった財務書類4表(貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書及び資金収支計算書)を作成します。
財務書類4表を使って財政を分析すれば、次のことが分かるようになります。
上記の指標を使えば、町の財政は「決して健全ではない。将来世代の負担が大きい」ということが分かります。
それでは、ひとつひとつの指標を具体的に見ていきます。
将来世代に残る資産はどのくらいあるか
少子高齢化で多くの自治体が人口減少に向かうなか、今だけ良ければいいではすまされません。
町の将来を見据えたしっかりした財政運営が求められています。
総務省が公表している財務書類4表を使った財政分析によれば、「将来世代に残る資産はどのくらいあるか」を検討するには次の4つの指標があります。
・住民1人あたりの資産額
・有形固定資産の行政目的別割合
・歳入額対資産比率
・資産老朽化比率
それでは、太地町のそれぞれの指標を見ていきます。
先ずは、住民1人あたりの資産額です。
太地町の2019年度の「住民1人あたりの資産額」は2,831,565円。
自治体の資産がたくさんであれば役に立つ資産(公共施設等)は住民サービスに寄与しますが、一方でその資産の大きさに応じて維持修繕費がかかります。
特に太地町では、有形固定資産(6,778,257千円)の内建物が5,515,054千円と極めてハコモノの比率が高く、その分維持修繕費の将来負担が大きくなります。
次に、資産老朽化比率です。
「資産老朽化比率」は63%。指数が50%を超えると、現在保有する建物や設備の半分程度がすでに帳簿上の価値を失っており、建物や設備を耐用年数を超えて使用している可能性があります。
太地町の場合、役場庁舎は築57年、小学校は築48年、公民館は築41年を経過しており、それが資産老朽化比率に現れています。おまけに役場庁舎と公民館は耐震補強も行われていません。
老朽化した施設は維持修繕費がかかるだけでなく、生命にも関わる状況なのです。
しかし、これらのことは財政健全化法の指標には現れません。
私は2022年の第1回定例会の一般質問で、「資産老朽化比率を財政判断の指標に加えるべきだ」と提案しました。
将来世代と現世代との負担の分担は適正か
「将来世代と現世代との負担の分担は適正か」を検討する指標は2つあります。
・純資産比率
・将来世代負担比率
純資産比率とは、例えば100万の車を自己資金70万円とローン30万円で買った場合、純資産比率は70%となります。
つまり、純資産比率が低いと借金が大きくなり、将来人口が半分になればさらに負担は倍になります。
ちなみに、太地町の2019年度の「純資産比率」は49.0%、とても「財政は健全だ」という状況ではありません。
もう一つの指標である将来世代負担比率とは、土地・建物・工作物・物品などの「有形固定資産」の将来の償還が必要な地方債による形成割合をみることで、社会資本形成に係る将来世代の負担の比重を把握することができます。
太地町の「将来世代負担比率」は57.0%です。
全国の平均は20〜40%なので、決して安心できる財政状況ではありません。
財政に持続可能性があるか(どのくらい借金があるか)
「財政に持続可能性があるか」を検討する指標は3つあります。
・住民1人あたりの負債額
・基礎的財政収支(プライマリー・バランス)
・地方債の償還可能年数
住民1人あたりの負債額とは、貸借対照表の負債合計額を人口で割れば住民一人当たりの負債額がわかり、住民にとってわかりやすい情報となります。
太地町の2019年度の「住民1人あたりの負債額」は1,441,806円です。
千葉県の自治体の平均がおおよそ30万円といわれていますので、太地町の負債額は極めて大きいといえます。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、歳入総額から地方債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から地方債等を差し引いた金額のバランスを見たものです。
指標がプラスでないと、借金の返済額は一向に減少しませんが、太地町の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は▲5億4,068万円と極めて大きなマイナスになっています。
これでは、「町の財政は健全だ」とはとうてい言えません。
地方債の償還可能年数とは、税収や補助金収入等の経常的な収入の黒字額で返済した場合に、何年で返済できるかを表す指標です。
太地町の「地方債の償還可能年数」は33.8年です。
全国の平均値は8〜10年ですので、このままでは太地町は地方債=借金の返済を長年に渡って続けることになります。
税収入の不足を地方債=借金で賄うハコモノづくりは、大きな負の遺産を将来に残すことになります。
身の丈にあった財政運営が必要です。
・・・その5につづく・・・
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